滋賀医科大学 内科学講座 血液内科 教授
村田 誠
2022年10月、滋賀医科大学血液内科は新しく独立した講座として誕生しました。その初代教授を拝命した村田誠です。私が考える滋賀医科大学血液内科のビジョン、すなわち目指す将来像は「一人一人の患者さんに寄り添う心を持ち、最新・最適な治療法を提供することで、地域の全ての血液内科患者さんに、滋賀医科大学で治療を受けて良かった、と言っていただける血液内科」です。
以下、次世代を担う若い医師、学生に向けたメッセージです。
血液内科の特徴の一つに、さまざまな病態生理の疾患を扱うことが挙げられます。腫瘍性疾患(白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など)、非腫瘍性疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病など)、遺伝性疾患(ヘモグロビン異常症、von Willebrand病、血友病など)、感染性疾患(伝染性単核球症、後天性免疫不全症候群など)と担当する疾患は多岐にわたります。そのため血液内科の診療は、血液内科学、腫瘍学、免疫学、感染症学など、広い領域に渡る知識を総動員して進めていく必要があります。すなわち血液内科の診療に携わることで、血液、がん、免疫、感染など広い領域にわたる総合診療能力が養われます。
診療と研究の垣根が低く、最先端の研究成果がいち早く医療現場に導入されるのも血液内科の特徴です。例えば、骨髄・末梢血幹細胞・臍帯血を用いた造血幹細胞移植、間葉系幹細胞を用いた細胞療法、モノクローナル抗体や二重特異性抗体を用いた抗体免疫療法、チロシンキナーゼ阻害薬に代表される分子標的療法、キメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子導入したT細胞療法など、血液内科ではこれらの全てを実地診療として行っています。
一人一人の患者さんについて、診断から治療までほぼ一貫して自らが主体となって診療を進めていくのも特徴の一つです。しかしこれは裏を返せば、診断から治療までの多くの部分が一人の血液内科医の双肩にかかってくることを意味します。そこで一人の患者に対して複数の担当医制にする、休日夜間は当番制にする、化学療法を可能な限り外来へ移行させるなど、仕事と休息のバランスのとれた労働環境を作るよう心掛けています。
そして、教科書の限界を認識し、未知なるものへ興味を抱くよう指導します。優秀で意欲の高い医師については、将来のリーダー候補として中長期的・計画的に育成していきます。一方、年々増加している女性医師への配慮と積極的な登用、多様な価値観を持つ若手医師への柔軟な対応も不可欠だと考えています。こうして滋賀県をはじめ国内外で活躍し、次世代を担う血液内科医および血液学研究者を育成していきます。
当講座への、情熱にあふれた若き医師の参加を心よりお待ちしています。
滋賀医科大学 血液内科